自宅やマンションの1室で接骨院を開業したいのですが・・・という先生が最近増えてきているように感じます。その多くは開業費用を抑えたいという理由をあげます。
かつての院を出せば必ず儲かるという時代であれば、金融機関から思い切って借り入れをするという先生が多かったのです。でも、こうも接骨院に厳しい時代になってしまっては、できるだけ借入金額は抑えたいと思うようになってきたようです。
で、自宅やマンションの1室ではどうか?と考える先生が増えたんですね。
ということで、今回は接骨院の自宅やマンション開業について。
目次
保険診療中心の接骨院は難易度が高い
自宅やマンションの場所にもよりますが、基本的には住宅街にあるものですから、そちらを基準にしてお伝えしますね。
まず、保険診療中心の接骨院をしたいのであれば、そういった環境の開業はおすすめしません。この場合、ある程度の人通りが見込める、立地のいい場所に出店することがかなり有利だからです。
そして安いから、近いからという理由で来る患者さんを数多く診ることで、儲けを出していく手法が、保険診療ではもっとも簡単で成功する確率が高い。(とはいえ、都会などでは普通にやって保険だけはなかなか難しいとは思いますが)
郊外のマンションの1室で、しかも一人整骨院というような状況であったらなら、単価の安い保険治療をしようとしても、かなり苦戦します。新規がそんなに集まらないので数をこなせないからです。
部位転がしでもすれば別ですが、普通にやるとすぐに患者さんは卒業していきます。すると、安定的に新規患者さんを集める必要が出てきます。それらがマンションの1室ではむずかしいのです。やはり立地を武器に集めるほうが難易度が低い。
自費治療メインもしくは整体院にしたほうがいい
前章に書いた理由から、自宅やマンションの1室で開業するなら、保険に頼った接骨院ではなく、自費治療をメインに取り入れた接骨院が望ましいと考えています。というか、接骨院ではなく整体院にしたほうが早いかもしれません。
理由は
- 価格を自由に決めることができる
- 遠くても不便でも受けたいという訴求がしやすい
- 通院回数が多くなる慢性患者さんを診ることができる
などが挙げられます。
価格を自由に決めることができる
保険診療ではもちろん価格決定権はありません。施術技術が高いベテランも、未熟な新人でも、請求できる金額に差はありません。
保険診療にどっぷりつかった柔整師ならこれに疑問はあまり持ちません。でも、一般社会で考えれば、これってどう考えてもおかしいのです。たとえばコーヒーひとつとってもそう。マクドナルドとスターバックスとリッツカールトンでは、その価格は大きく違います。
京セラ創業者の稲盛和夫さんの言葉に「値決めは経営である」というものがあります。価格というのはそれぐらい大事なんですね。
だから価格を決定する権利を持つことはきなメリットです。
遠くても受けたいという訴求がしやすい
これは整体院にすればということに基本的にはなります。
ご存じの通り、柔道整復師や接骨院には広告制限があります。これを遵守すれば、どこも同じような広告となり、広告による差別化ができません。ホームページなら今のところ問題ないとはいえ、保険診療の範囲ではなかなか差別化は難しいといえます。
となると、やっぱり患者さんを集めやすいのは、立地を武器にした接骨院。住宅街やマンションの1室の接骨院はどうしても不利になります。
しかし、自費整体院であれば、そういった広告制限も業務範囲も緩くなるので、他院との違いを見せやすいといえます。つまり、この治療院であれば、多少遠くても行ってみようかなと思ってもらえる広告がしやすいということです。
注釈:接骨院のままでも自費治療はもちろんできます。ただ、その業務範囲がどこまでかの線引きの定義が今のところありません。柔道整復術で施術を行っているといえば、なんでも通るともいえます。
でも、普通に考えてその業務範囲は狭く、たとえば柔道整復術で内科系疾患などに幅広く対応できるとは考えにくいです(間違っていたら訂正します)
そういった意味で、整体院を前提にして、そうしたほうが違いを訴求しやすいと書きました。
通院回数の多い慢性患者を見ることができる
療養費の支給対象となる外傷は、基本的にそれほど通院回数は増えません。年齢や生活環境などにもよるでしょうが、普通はそんなに長期にわたって、しかも通院が頻回になることはないと考えられます。
こちらの記事(第5回柔道整復療養費検討専門委員会)にも書いたように、医師である専門委員からこんな意見も出されています。
この委員曰く、長期がダメな理由は、打撲や捻挫は医学的にみてそんなに長期の施術が必要になることはない。長期になるのは運動器の慢性疾患が入っているからではないか。
頻回がダメな理由は、外傷の初期は安静が必要なのでそんなに頻回にならない。医療機関とくらべても接骨院の通院日数は明らかに多いというエビデンスもある。
多部位がダメな理由は、1回の受傷で1.22部位というエビデンスがある。だから3部位というのはちょっと考えにくい。たぶん慢性疾患などが入っているのではないか。
おそらく反論したい柔整師もいるとは思いますが、新鮮外傷と慢性症状であれば、慢性のほうが改善に時間が掛かる場合が多いということは、だいたい合っているはずです。
保険診療ではもちろん慢性症状は診ることはできません。でも自費ならばそれは可能です。これは柔道整復術の範囲内でも対応できることがまだ多そうなので、整体院にしなくても十分運営していけそうです。
比較的長期になりそうな慢性患者さんを、高単価の自費で行う。新規が集めにく状況であれば、そういったところで売りあげていくほうが現実的なのです。
集患にお金が掛かることを想定に入れておく
路面店など立地のいい場所と、自宅やマンションの1室のもっとも大きな違いは、新規集客にあります。後者は家賃が安いというメリットの代わりに、新規集客にお金が掛かるというデメリットがついてきます。
それをしっかり認識したうえで、集患にあるていどの費用をかけていかないと、なかなかうまくまわっていきません。路面店で営業している保険診療中心の接骨院のイメージをそのまま当てはめてしまうと大失敗します。
なので、新規開業する際には、そういった広告宣伝費は予め確保したうえで、計画を練っていくことをおすすめします。
新規が来ない。でも集客のための費用が捻出できない。この状態に陥ってしまうと、最悪潰れます。潰れなくても、集客をお金を掛けずに行うわけですから、必然的に時間と労力が掛かります。
できるだけ施術に集中し、できるだけスムーズに経営を軌道に乗せていきたいのであれば、広告宣伝費の確保をしましょう。
患者さんの通院の「足」を確保する
郊外の住宅街やマンションの1室で失敗するケースは、なにも新規集客に関することではありません。通院の「足」の確保ができずに、リピート面での失敗もあるのです。
一般的に治療院はリピートしてもらうことで利益が出ます。となると、リピートのための障害は命取りになりかねません。それが通院の「足」です。
たとえば、通院される患者さんが車で来る方が多いのであれば、駐車場の確保は必須です。自転車で来ることを想定するなら、駐輪スペースも確保したいです。
新たに物件を探すのであれば、より駅に近いところ。より繁華街に近いところ。という発想よりも、駅からは少し遠くなるが、より「足」を確保しやすいところを狙ったほうがいい場合が多くあります。
まとめ
接骨院も飲食店などと同じように、店舗を使った商売なので、立地は非常に大事です。巷には、「治療院に立地は関係ありません!」なんて発言をするコンサルタントもいますが、あれは大間違い。店舗ビジネスに立地が関係ないわけがない。
とはいえ、多少立地的に不利があっても十分戦えるのが治療院経営の特徴でもあります。もちろんそれには、わざわざ選ばれる違いや特徴を明確に押し出していくことが必要になりますが。
もっとも失敗しやすいのが、立地が悪いことのデメリットを低く見積もってしまうこことです。好立地の保険中心の接骨院と同じように患者さんが集まるものだという感覚でいると、やぱりうまくいきません。
チラシやウェブの反応率も悪くなることも十分考えられます。リピート率に響くこともあります。あらゆることに立地は影響します。そこをわかったうえで、それでもどう戦っていくのか?をしっかり考えていくことが大事です。
どんな接骨院か?どんな人にぴったりなのか?その人がどうなれるのか?それらをしっかり明確にアピールして「だったらそこに行こう」と選ばれる治療院になることを意識してくださいね。
整骨院・接骨院集客経営コンサルタント、加藤
登録は無料です。配信解除はワンクリックでできます。
ホーム | コンサル料金 | 教材販売
コメントを残す